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p.74 言葉にする

執筆者の写真: 作者の息子
作者の息子
1月10日
読了時間: 4分

更新日:8月25日

父が亡くなって、もうすぐ一年。


旅立つ、小さな銀河のオデッセイ
旅立つ、小さな銀河のオデッセイ

一年前の当時は、生きているうちに自分たちの手で焼き上げた結晶を見せて、ちゃんと焼けるようになったんだなと思わせたいと必死でした。


それから半年が経ち、今になってようやく見せたかった銀河の輝きが窯から出てくるようになったなと、思っています。


ただ、そうした器たちを見て思うのは、やっとここまでは辿り着いたという安堵と、そして喪失感。


やっぱり銀河釉は焼き物だけじゃない、改めてそう思いました。そこには、父が何を考えて、なぜ銀河釉を生み出そうとし、そして最後まで作り続けたか、次世代の私たちにはその部分までも理解し繋げていくことが求められているように感じるのです。


「形だけではダメ」


父はよくそう言っていました。


なんとなく抱えていたそんな不安を、SNSにこぼしてみたら、意外と暖かく見守ってくださっている方が多くいることを知り、勇気を持ってこれからたまに銀河釉のストーリーの部分も文字にしていきたいと思います。


でもまだ、自分の言葉だけで語るには迷いが多すぎる。


そして、何より父の願いや想いが朽ち果てないようにどこかに書き留めておきたい。


そう思うので、しばらくは「回顧録」という形で、父の言葉やかつての日々を思い出したりしながら、息子の視点で、私がふと思い返したことなどを綴っていくことで、みなさんにも銀河釉の物語の一片を共有できるといいなと思っています。


そして、それがいつの間にか私の身にも自然に擦り込まれていくといいなと思っています。



しかし、書き始める前に一つ言っておきたいことがあります。


それは、私も父のことを十分には知らないということです。


父が亡くなったのは73歳、私の年齢を引くと私は父が45の時に生まれた子ということになる。つまり、私が時間をともに過ごしたのは後半の途中からで、彼の人生は私が知らない時代の方が圧倒的に長い。しかも、ものごころがついた頃からの記憶と考えると、最後の1/3ぐらいだけで、さらに私は銀河釉が生まれた後に産まれている。


(ちなみに、代表作『銀河のオデッセイ』は、私が産まれた年に生まれています)

式場に飾った『銀河のオデッセイ』
式場に飾った『銀河のオデッセイ』

このことは、父の葬儀に参列してくださってる方々を見て、実感しました。


私は、私の身体の半分は、文字通り父で出来ている訳だし、父のことを誰よりも、少なくとも母の次ぐらいには知っていると思っていたのですが、父と青春時代をともに過ごしたかつての学友の方々が、父に投げかかけている言葉を聞いて、私は何も知らないんだ、ということを知りました。


しかも、私が知らないのは中尾哲彰が「中尾哲彰」として出来上がっていく、まさにその時間。


なぜ、彼が中学生の時から哲学書を読み続けるようになったのか


なぜ、あんなに学問を大切にし学者に片足を突っ込んでいた彼が、陶芸の世界へと身を転じることになったのか


どうして、そこまでして器に銀河を、「銀河釉」を創り出したかったのか


そして今、目の前に残っているこの作品たちの名前の意味さえ、私はちゃんとは知らない。


だから、知りたい。


それを聞かれ、それを自分の言葉で答えられる人が居なくなってしまい、代わりにとぼとぼと答える私の言葉には、血が通っていない。人から借りた言葉を並べて答えたことにしまうのではなく、ちゃんと自分の言葉にしたい。


だから、私は父が亡くなってから、かつての学友だった方を訪ねて話を聞き、父の書斎に残された本を読み始めました。父の病気から休学したままになっていた大学院にも復学し、今は父がかつて研究していたようなことを大学で探究しています。

当時のままの書斎
当時のままの書斎

これから書き記していくことは、それでも結局は人の言葉で聞いた言葉でしかないことが多く含まれるかも知れません。


ですが、今は昔より色んなことが分かるようになってきた気がするのです。しかも、それは時系列に則って整理されたものでもなければ、焼き物を作り本を読む生活の合間で、たまに文字になるものでしかないかも知れません。


それでも、定期的にこの回顧録のページの続きを埋めていけたらなと思っています。


そして、それが「回顧録」に閉じるのではなく、ステンのこと、中尾家のこと(ネルソンも当然含む)、これからの銀河釉の未来のことについても、話せるようになったらいいなと思っています。


あまり期待せず、これから気長に言葉になるのを待っていただけると嬉しいです。








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